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絵筆を握る手 23 [novel]

事故から二年ほどの月日が流れていた。

考えてみるとこの二年、いろいろなことがあって辛かったけれど早く過ぎたような気がする。

相変わらず手は自由に動かせない。

足に至ってはもう諦めてすらいる。車椅子で我慢だ。

お医者さんに言わせれば、わずかでも手を動かせることができるだけで奇跡らしい。

傷害保険の降りない私は、今は親に頼って生活していた。

そしてこの日もリハビリのため病院に私はいた。

自分の誕生日くらいどこかでゆっくりして痛かったのだが、田植と言った彼がくるように言って聞かなかったのだ。

彼だってこの日が私の誕生日であることくらい知っていて可笑しくない筈なのだが。

「誕生日おめでとう。」

会うなり彼は言った。やはり覚えていたらしい。

そして彼は小さな、とは言え二十センチ弱四方の大きさはあるものを私に渡した。プレゼントだった。

「あけてもいい?」

私は聞いた。別に聞くようなことでもなかったのかもしれないのだが、とにかく聞いた。

プレゼントを買ってくるという行為だけ見ると、なんだか気が有るような気がして複雑な気持ちになるのだが。

しかし、あけてみて何故彼がプレゼントを買ってきたのか納得した。


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